CPAC 2017 開催にあたり

経皮的冠動脈形成術(PCI)が最初に行われてから今年で40年となりますが、末梢血管に対するインターベンションの歴史はその10年以上も前に遡り、1964年にはオレゴン大学のCharles DotterがJudkinsカテーテルの生みの親であるMelvin Judkinsと共に下肢動脈疾患患者の血流を改善するために、径の異なる複数のカテーテルを用い小径から大径のカテーテルを段階的に挿入する、いわゆる、Dotter法を行ったことから始まります。Dotter法は新たな治療法として一時注目されましたが、より安全なバルーンによる経皮的血管拡張術が主流となりました。

冠動脈領域では、バルーンからベアメタルステント(BMS)、そして、薬剤溶出ステント(DES)へとデバイスは進化し、長期開存率は向上しました。一方、下肢動脈領域でもBMSが登場し、DESも利用できるようになったものの、長期開存率には限界があり、ステント留置後の閉塞には次の一手が限られています。新たなデバイスやテクニックにより初期成績は改善しましたが、長期成績を改善するためには術後の薬物療法、食事療法、運動療法に加え、末梢血管と冠動脈の病態の違いを考慮した治療を行わねばなりません。

我々は末梢血管内治療(EVT)の成績が不良な原因にも目を向ける必要があります。冠動脈病変とは異なり下肢動脈病変ではメンケベルグ硬化症を伴う線維・石灰化プラークが圧倒的に多く、且つ、病変長が長く、既存のステントで十分なスキャフォールド機能は保てません。さらに、SFA領域ではステント留置後の新生内膜の増殖は長期にわたり継続するため、一時的に薬剤を放出してもその効果には限界があります。欧米ではステント留置後は薬剤コーティッドバルーン(DCB)やデバルキングが次の治療戦略として脚光を浴びています。今のところDCBは複数の多施設臨床研究より期待の持てる成績が報告され、日本でも近い将来、上市されると考えられます。しかしながら、DCBの真価が問われるのは、高度石灰化を伴う長い病変を有する糖尿病や透析患者が多くを占める日本の実臨床に導入されてからになります。デバルキング単独で終えられる症例は限られますが、病変形態を変えるデバイスとして期待が持てます。

CPAC 2017は、「温故知新~ニューデバイス時代のEVTの治療戦略~」をテーマとしました。今年から来年にかけてEVT領域では新たなデバイスが登場しますが、いかなる時代においても我々は術者としての技術を磨き、初期成績を向上させられるよう修練を積む必要があります。本コースでは、国内有数の術者と我々チーム豊橋が培った経験とノウハウをEVT領域に応用し、皆様に共有させていただきます。そして、新たなデバイスの登場を見据え、既存の技術で治療できる限界と新たな技術で治療できる可能性を追求し、最適な治療を皆さんと議論できる場にしたいと考えております。